真新しいランドセルに子どもはウキウキ。ママやパパも、小学校での新しい生活にドキドキな時期ではないでしょうか?園から小学校へスムーズに馴染めるお子さんもいれば、慣れるのに時間がかかったり、うまくいかないお子さんもいらっしゃるようです。そこで、今回は、小学校でスクールカウンセラーを長年つとめている、公認心理師・臨床心理士の吉田直樹先生に聞いてみました。
最近の新1年生の傾向を教えてください。
15年前からスクールカウンセラーとして小学校を毎年10~20校ほど担当しています。最近、4月に1年生の教室を見に行くと、教室の中をウロウロ、廊下でブラブラしている子どもを目にすることが多くなりました。座ってはいてもソワソワして落ち着かなかったり、友達にちょっかいを出したり。授業に飽きてしまうと床に寝転んだり、掃除用具入れに入ったり・・・。
園と小学校との違いに戸惑ってしまう子どもが増えているようですね?
いわゆる「小1プロブレム」と呼ばれる状態です。明確な定義はないのですが、一般的には、小学校1年生の学校への不適応の状態を指します。クラスがうまくいかないという集団の問題と、学校に行けなくなるなど子どもの個人の問題があります。
いつから「小1プロブレム」が出てきたのですか?
1990年代後半から、小学校1年生の教室で「授業中に立ちまわる」「先生の指示が通らない」などの問題が目立つようになりました。そして、2000年代に入ると「小1プロブレム」と呼ばれるようになり、各小学校で対策が取られています。
どれくらいの学校で「小1プロブレム」が起こっているのですか?
調査結果から20%以上の公立小学校で「小1プロブレム」が発生しています。先生の経験や指導力や不足が原因では?と考える人もいるかもしれませんが、ベテランの先生のクラスでも起こっています。つまり、小1プロブレムは、教師個人の力では対応できない問題なのです。
昔からある「学級崩壊」とは違うのですか?
授業中に子どもが騒いで授業が成り立たない、勝手な行動をして学級が機能しないという点では共通しています。学級崩壊は、学年に関係なく起こり、教師や学校への反発、特定の子どもが原因となる場合が多いので、クラス替えや担任の交代で解決します。しかし、小1プロブレムは、きっかけが入学であり、複数の子どもがそれぞれ別の原因で不適応になります。したがって、従来の学級づくりだけでは対応が難しいのです。
家庭でできる「小1プロブレム」の予防方法はありますか?
園では年長になると昼寝をやめて、小学校入学へ向けて生活リズムを整えていきます。家庭でも、起きる時間と寝る時間を一定にしていったり、朝食をとる習慣も大切ですね。また、持ち物の整理整頓も学校では必要なので、自分で使ったものは所定の位置に戻す片付けや、挨拶などのコミュニケーションも練習していきましょう。
園で身につけたほうがいいことは何ですか?
小1プロブレムの一番の問題が、授業中立ち歩いたり、集中することが出来ないことです。絵本の読み聞かせやお誕生日会など、30分ほど座って楽しむイベントはおすすめ。座る前に運動をさせるとエネルギーが発散して落ち着きやすくなります。座るのが苦手なお子さんは、好きなことや得意なことを5分続けることから練習をスタートしましょう。
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