1月1日の能登半島地震・津波、翌日の羽田空港での衝突事故が起こり、佐世保でも災害や事故にこころを痛めたり不安が広がっているようです。「夫が仕事で忙しくワンオペ状態なので災害のことを考えると心配です」「子どもから、佐世保では地震は起きないよねと子どもから聞かれて答えに困ります」「テレビやネットニュースをみていると気分が暗くなってしまいます」「被災者に何かしてあげたい気持ちが強く、詐欺めいた募金に引っ掛かりそうになりました」など今回の災害に関連した悩みや質問がママパパ編集部にも数多く寄せられています。そこで、今回はトラウマカウンセリングを専門としている公認心理師・臨床心理士の吉田直樹先生に、読者の皆さんの質問に答えてもらいました。
直接被災にあったり事故の経験をしていなくても、テレビやネットで衝撃的な内容のニュースをみると心に影響があるのでしょうか?
各種報道番組でショッキングな内容を視聴することで、おとなでも子どもでも、惨事ストレスが⽣じることがわかっています。このようなストレスが⼼⾝の不調につながらないように注意が必要です。
能登半島地震についてのテレビやネットのニュースについて、家庭ではどのようなことに注意したらいいのでしょうか?
災害や事件・事故の映像や写真、報道を繰り返しみたり、長時間視聴すると、不安を感じてPTSD(トラウマ)の原因になると言われています。また、料理など家事をしながらの視聴も同様です。家庭では、「ニュースは朝と夕方だけ」などルールを決めるといいでしょう。
中学生の子どもが、ネットで災害関連のニュースをみつけては大騒ぎしています。「やめなさい」と言っているのですが・・・
能登半島地震のように、災害直後は、多くの⼈が不安になるために、⼤量のデマや噂がネット等で発信されます。そして、偽の情報がさらに人々を不安に陥れます。子どもは特に敏感な面があり悪循環になりやすいので注意が必要です。家庭では、衝撃的な報道であれば、親も一緒に内容や情報源を確認して、慎重に対応しましょう。
40歳代になり、更年期なのか気分がすぐれません。体調もあまりよくないので、災害や事故の映像を見ると暗い気持ちになってしまいます。
メンタルの調子が悪い方は、災害や事件の報道に接すると、より敏感に心身が反応して調⼦を崩しやすくなると言われています。メンタルが不調な⽅は、できるだけショッキングな報道を避けることが重要です。また、災害に耐えて頑張っている被災者の姿や、各地からの応援メッセージなど、プラスの情報は、気持ちを前向きにしたり、考えをポジティブに変えることがあるので取り入れるといいでしょう。
テレビやネットで、事件や事故の時にトラウマやPTSDという言葉をよく聞きます。どのようなものなのですか?
トラウマとはこころの傷(心的外傷)という意味です。また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、強烈な心理的ストレスや大きなショック体験がこころのダメージとなり、時間が経過しているにも関わらず、その経験に強い恐怖を感じることです。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因とされ、新型コロナウイルスによるパンデミックも含まれます。
石川県が実家で、幸い家族は無事だったのですが、故郷のことを考えると複雑な気持ちになります。こころが傷ついたときには、どんなことが起こるのでしょうか?
一般的にトラウマやPTSDの場合、頭痛や腹痛など身体症状が、まず見られます。感情が不安定になったり、自分では忘れていても、ネガティブな感情が突然よみがえることもあります。マイナスの記憶を思い出さない時でも、常に不安や緊張を感じ過敏になります。また、嫌な記憶を思い出す場面を避けたり、親や同僚の助けや、友達の優しさを受け入れられなくなることもあります。
【気持ち】無力感、不安、イライラ、何も感じない、孤独感、気分のムラ、激しい感情、意欲がわかない
【考え方】集中できない、ぼーっとする、自分を責める、自己破壊的な考え、不信感、判断力の低下
【行動】落ち着かない、人に会うのが嫌になる、甘える、無気力
【身体】不眠、食欲不振、頭痛、疲労感、腹痛、吐き気、めまい、身体がだるい
東日本大震災の時に、夫が災害支援の任務に就きました。今回の能登半島地震により、その時の悲惨な状況を思い出したり、恐かったり、イライラしているようです。改善はできるのでしょうか?
こころの傷(トラウマ)は、乗り越えることができる問題です。「どうしようもないことだから」とあきらめている方も多いようですが、今の夫自身のメンタルだけではなく、今後の人間関係にも悪影響を及ぼすこともあります。つらい状態が続いたり、悪化するようであればこころの専門家にご相談されることをお勧めします。トラウマ専用のカウンセリングもありますので選択肢として考えるといいでしょう。
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